「不可能」と言われた静寂へ。 チェーン式立体駐車場、50dBの壁を越えるまで。

Background

STORY

チェーン式立体駐車場では、作動音は設計上避けがたいものとされてきました。
機械式駐車装置が発する音という見えない障害と向き合い、発生源から見直すことで、
静かさと強さ、柔軟性を併せ持つ新たな選択肢を形にした、日栄インテックの開発ストーリー。

常識への挑戦

「チェーン式で、静かな製品ができるなら採用する。」国内有数の実績を誇る大手ゼネコンから告げられたその一言。それは期待と同時に明確な挑戦状でもありました。立体駐車場の世界では、静音性を重視するなら油圧式、強度や柔軟性を重視するならチェーン式——そんな住み分けが、長く“常識”とされてきました。チェーン式は、重量物に強く、仕様変更にも柔軟で、コスト面にも優れています。一方、必ずと言っていいほど向けられるのが、「音が大きい」という声でした。目標は国内基準L5で夜間50dB以下。常識を覆す静音化への挑戦が始まりました。

迷走と試行錯誤

開発前の騒音は70〜80dBでした。私たちはまず音を“塞ぐ”ことに集中し、モーターカバーや静音シート、防音カバーの追加などダクトによる排音、防振シートの設置など、あらゆる対策を講じました。その結果、平均50〜51dBまで低減させることに成功します。しかし油圧式も同水準。“チェーン式を選ぶ理由”にはまだ届きませんでした。新潟・千葉の工場も巻き込み試作と検証を重ねましたが、設置条件が変わると数値は安定しません。次第に、現場には違和感が漂い始めます。「これは、音の問題だけではないのではないか。」

構造に潜む真因

転機は2013年。公的専門機関による解析の結果、それまで曖昧だった騒音の発生メカニズムが明確になりました。パレットから発せられる床板の撓みにより誘発される揺動が、巨大なスピーカーとして共鳴させていたのです。ようやく本質的な課題に向き合えた私たちは、外側を覆う対策から離れ、設計思想そのものを根本から見直す決断をしました。試作と検証を幾度も重ね、数値と向き合い続けた末に、測定値が大幅に改善。ようやく本質的な答えへとたどり着いたのです。

静寂の誕生

しかし、安定して50dB未満を達成するだけでは、十分とは言えませんでした。数値を下げるために構造を変えすぎれば、チェーン式本来の強みを損なう可能性があるからです。求められていたのは、静音性の追求ではなく、静けさとチェーン式の価値の両立。重量物に強く、仕様変更にも柔軟で、コスト面にも優れる——私たちは構造全体を再設計し、細部まで見直しを重ねました。最終測定で示された数値は、明確に50dB未満。そして同時に、チェーン式の強みもそのままに。こうして、常識を塗り替える「プレミアムピット静音仕様」は誕生しました。